こしらえない

友人から「どこがかわいいのかわからない」ともっぱら評判の、妻の愛する「鼻さん」の指人形。もう売っていないので壊れたり紛失したりすると困ったことに。そんなことになる前にと粘土でもって「鼻さん」を作ってみたりしたけれど、どう見ても鼻さんには程遠いただのいびつな丸。そういえば中学校の美術の成績は「2」だった。不器用だった。おまけにセンスもない。そこで妻は手持ちの「鼻さん」を複製することにしたのだった。

得意の検索でいろいろと調べていると、なにかのキャラクターの女の子のフィギュアを作っている方のサイトがいっぱい出てきた。未知への扉。それにしても世の中には器用なひとがたくさんいる。そこで学んだところによると、こういう時は「ポリエステル・パテ」というものを使うのだそうだった。なるほど。妻はさっそく買いに行く。
「街の小さな模型屋さん」といったかんじのお店のドアをキーと開け、中に居た「趣味:ホビー」という風情のおじさんに「あの、ポテ…パテ、ありますか」ともごもご尋ねるとおじさんはうんと頷き「ポリパテなら『タミヤ』と『モリモリ』があるけどどっちが良いかな?」と言った。モ…。それはなに…。冷汗びっしょりで聞いたことのある「タミヤ」を選択し(「モリモリ」は商品名だった)、勇敢な買い物は終わった。あとは作るだけ。

「おゆまる」で鼻さんの型を取る。「おゆまる」とはお湯に入れると柔らかくなる樹脂で、大きなおもちゃ屋さんには売っているらしいのだけれど行く店行く店「ん?」と首を傾げられるばかりなのでおとなしくインターネットで購入。

柔らかくなった「おゆまる」で、鼻さんをべろりと包む。そのあと水に浸けると元の硬さに戻るしくみ。きらきらのラメの中に包まれた鼻さんは「くず餅」みたいでややシュール。

パカ。
ちゃんと型になっている。すごい。本格的な複製を作るのには「おゆまる」は不向きだそうなのだけれども、妻なんかには上等なのだった。
ここに買ってきた「ポリエステル・パテ」をねりねりと練って入れ、型を合わせてやきもきと約2時間。

パコ。
注意深く型を外すと妻の目に立体的な鼻さんの後頭部あらわる。刻まれた文字までくっきり複製されている。素晴らしい。妻はもう小躍り。勢いづいてご機嫌で残りの型を外す。

イヤー!鼻ー!!と叫ばずにはおれない。鼻さんの存在意義である鼻の先端に気泡が入ってこの始末。他の専門的な道具をなにも持たない妻は青ざめながら適当に「つまようじ」で鼻にパテを詰めて形成。

それでも立派に形になることに妻は感激。すっかり楽しくなってしまってそれから石の粉の粘土や木の粉の粘土をどんどん型に詰め、繊細な鼻を折りまくり、さこさこと紙やすりで削ってなめらかにしたあと白のスプレーをシューとふりかけるという作業をばかみたいに延々2ヶ月もやっていた。

そして乾かすためにサーンと挿した鼻さんを見た夫にとうとう「…この前衛的な『厄除け』のオブジェみたいなのはなんだい」と言われてしまったのだった。
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