四国旅日記(月刊婆)

毎月恒例。四国にひとり住む祖母の様子を見に母と。
今回は手続き的な用事が多いので母は「ひとりで行ってくるよ」と言っていたのだけれど、祖母の熱烈なラブコールにより妻も参戦。祖母は「妻」よりも「車に乗った妻」が好きなのだ。どこへでも行くからだ。

今月も祖母は絶好調。
お隣の家にお土産を持ってあいさつに行くと、お隣の奥さんが「ヨシ子さん(祖母の名前)昨日庭の枇杷の木に登っておったぜ」と教えてくれたのでびっくり仰天。木登りをする85歳のヨシ子さん。やめて。ばあちゃん落っこちたらどうするの。
しかし祖母は一向に悪びれない様子で「枇杷の木は強くて折れんのぜ」と今はどうでも良い知識を披露。それにしたって枇杷の実をとるなら脚立を使うとか。孫である妻が帰ってくるのを待つとか。あるじゃない。そう言うと祖母は両手を挙げて「そんなせせかましい(面倒くさい)」と妻の提案を一蹴。

お医者にも行く。
老人だらけの町のお医者の待合室でじぶんのことは棚に上げ「なんぜ。年寄りばっかじゃのう」と鼻白んだ挙句、診察室に入るなり先生に「ちょっと用事があるけん、あと5年生きんといけんのでお薬ください」と言った。そんなこと言われたってお医者だって困る。
帰る道すがら、いったいどんな用事があるのかと聞いてみると5年後に毎月掛けている保険のなんとかが満期になるのだそうだった。満期…。そう…。あんまり素敵っぽい用事でもないけれど、人生にはりがあるのは良いことだと思う。
台所には「シヲ」と書かれた調味料入れ。シヲ。入っているものはなんとなく砂糖に見えなくもなかった。

ばあちゃんドライブに行こう。
「…ドライブって何処にあるんじゃ?」と言う祖母を問答無用で助手席に乗せてドライブ。涼しげな渓谷まで行ってみるもやっぱり暑い。炎天下の中、「わあー」という声に振り返ったら小さな公園の脇にある水のみ場の蛇口を盛大に捻った祖母が上向きにピューと勢いよく出た身の丈3倍ほどの水を手で押さえて慌てていた。祖母は相変わらずだった。

ひとしきり遊んだあと、妻と母はもう帰る。全力で遊ぶと祖母もあまり心残りはないらしく、「また来てな」と笑顔で送り出してくれた。「わしはこわいけん、もう寝る」とも言っていた。なにが怖いんだろうかと思って母に聞いたら「こわい」は「疲れた」という意味なのだそうだった。方言をまたひとつ覚えて四国おわり。
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