
恒例の、四国に住む祖母の様子を見に母と。
瀬戸大橋を渡って車でぶんぶんと5時間。近所の空き地に車を停め、荷物を抱えて歩きながらなんとなく祖母の家に目をやると、真っ暗な庭で祖母がボーと突っ立っていたのでびっくり仰天。訳を聞くと「昼寝して起きたら夜になっとったけん、途方に暮れておった」のだそうだった。相変わらずとんでもない途方の暮れ方をする祖母だ。

晩ごはんは祖母が我々のためにコンビニで買ってきてくれていた大量の「のり巻き」。
賑やかな食卓に祖母はすっかり楽しくなって「3ヶ月に1回ぐらいでいいからまた遊びに来てくれんかのう」と言った。ばあちゃん。妻は3月にも来ているよ。そして母なんかは先月も来ているよ。と驚くと祖母は大げさに首を振って両手を挙げ「うっそだあ」と言った。本当だあ。

チチヤス低糖ヨーグルトの朝。
祖母の家にはまたテレビが増えていた。ひとりで無意味に5台ものテレビを所有する老婆。そうよね。時代は地上デジタル放送だものね。祖母がわからないのを良いことになんでもかんでも売りつける町の電器店のおやじから買った、およそ良心的とは言えない価格の液晶テレビは見たことも聞いたこともないようなメーカー。おのれおやじ。

とても良いお天気なので押入れにある布団をせっせと出して天日干し。夕方にはふかふかになっていると良い。
それを見ていた祖母が小さなきんちゃくを持ってきて妻にじゃらじゃらと振って見せ「ユキちゃんお駄賃やるぜ」と言った。妻、満面の笑みで手を出す。

これはいったい何円か。
寛永通宝もあれば1000円玉まである。明らかに収集している。これ集めてるんじゃないのばあちゃん。そう言うと祖母はウフフと笑って「知らん」と言った。そうか。知らないか。
ありがたくいただく。

お礼に妻も財布の中にあった「湯上り風野口さん」を祖母にあげる。祖母は「ほほう。野口先生」と唸ってポケットにしまった。それから随分と経った次の日の夜あたりに突然「あ!」と叫び、「あれは千円札か!」と言ったのだった。遅すぎる。

祖母と妻の会話。
婆「ユキちゃん、店に行きたいんじゃが車出してもらえんじゃろか」
妻「いいよ。どこのお店ですか」
婆「あの、鉄道の向こうの、あの店」
妻「ああ。ローソン」
婆「そう。ローション」
妻「ちがうよ」
婆「ローション」
妻「ロー…」
婆「ション」
なぜだか祖母が店の名をがんとして譲らないので妻と祖母は連れ立ってローションに「油あげ」を買いに行った。
しかもここのローションはオレンジ色。

ドライブにも行く。
道の駅で果物やお弁当を買って近場のダムまで行き、木陰に腰掛けてむにむにと食べる。うぐいすが鳴いて、風は爽やかに、しまいに気の早い蝉まで鳴き出して五月晴れを満喫。祖母も上機嫌。

祖母の家に戻ると猫が待っていた。猫はマッサージチェアに横になった祖母のそばにぴったりと寄り添って一緒に眠る。いいな。妻もあんなのが欲しいな。と呟くとそれを聞いていた母が「タカマル君がいるじゃない」と言った。居るけども。夫はたんすの上にたーんとジャンプして前足で写真立てをひとつづつ落として遊んだり妻の足許をぐるぐる回ったりしないのだ。

翌日はもう帰る。
ばあちゃんまた来るよ。写真も送るからねと言うと祖母は喜び、「もう拝んでおくわい」と言って拝まれた。仏の気分になって四国終わり。